
先月の4/5にレーシングチームエイトリアン(RTE)のメンバー6名による、RE-71Rのサーキット走行テストを実施しましたので、その報告を致します。なお、各人は当然ながらプロドライバーではありませんので、あくまで素人目線での参考としてご理解いただければと思います。
今回のテスト参加者は、エイトリアン、れじさん、keroさん、いなとみさん、ヨシフミさん、R大佐さんです。全員が筑波サーキットをホームコースとする、RX-8でのタイムアタック経験も長いメンバーばかりです。
以下レポートです。

当日の天候は生憎の雨。しかし、雨天時のグリップ力を測るという意味では最適なコンディションとも言えます。また、路面は乾いたりウェットになったりとコロコロ状況も変化し、概ねドライになった時間帯もあったりしたため、当日のタイムなどは参考値程度とご理解ください。

パドックはこのような状況で、路面が濡れているのが確認できるかと。
このまま雨が上がれば路面も、という状況ではありましたが、結局パラパラと雨は降り、路面が完全ドライになることは一度もありませんでした。

テストに使用したのは、RE-71R 265/35R18。本日おろしのド新品となります。
この日のタイムスケジュールは以下の通りです。
テストを行うとは言え、コースを1日貸し切るわけにもいきませんので、筑波サーキットのライセンス走行枠を使いました。
AM
08:00?08:20 Y1 れじ
→08:10?08:20 タイヤ交換
08:30?08:50 E1 エイトリアン
→08:40?08:50 タイヤ交換
09:50?10:10 Y2 kero
→10:00?10:10 タイヤ交換
10:20?10:40 E2 いなとみ
12:40?13:00 Y3 ヨシフミ
→12:50?13:00 タイヤ交換
13:00?13:20 E3 R大佐
走行はインラップアウトラップを除き3周。そしてパドックに戻り、タイヤ交換を行い次の出走者に交代する、という形になります。

このタイヤ交換を一手に引き受けたのは、我らが彗星さん。トータル6台のタイヤ交換を一人で実施していただきました。改めて御礼申し上げます!お疲れ様です。


最初にテストするのはれじ選手。
路面はまだ乾いていません。
◆れじ選手のレポートです
今回私は1枠目で走行しました。
朝から生憎の雨模様で、走行中は止んでいましたが路面はフルウェット状態から、走行中にうっすらレコードラインがハーフウェットになりかける程度でした。
エア圧は走行前180kPaでコースイン。新品タイヤのため、タイヤの皮むきと発熱を促すために3周ほどウォーミングアップし、4周目で190kPaになったところで(エイトリアン注:ホイールにはTPMSが装着してあり、走行時には前者にTPMSモニターを設置し、走行中にエア圧が確認できる様にしていました)ペースアップしましたが、まだ皮むきが不完全だったようで出口アンダー、ブレーキングでロックしたものの、排水性能が高いためかコントロールを失わずに済みました。滑り出しの唐突感が少ないこともあり、動きが予測しやすかったです。
5周目には200kPaまで上がったため、タイムアタックラップに入ります。
路面はまだウェットのため、概ね8割程度の走行に抑え、コーナリング中にいつ滑り出すかを身構えながら走りましたが、ターンイン、立ち上がりとも予想より高い速度域でクリアできました。現在使用しているZ2☆スペック(275/35R18)に比べても、ウェット路面での高い接地感が感じられ驚きです。次のタイヤ交換があるため、アタックはこの1LAPのみ、タイムは1'15.10でしたが、まだまだ十分な余力はありそうな感触でした。
以前RE-11を使用していましたが、ヨコの感覚がわかりにくかっただけでなく、滑り出しの唐突感があり、自身では使いこなせませんでしたが、71Rはタテ、ヨコとも次元が高く、バランスが非常によいタイヤだと感じました。
RE-71Rは発熱が良いことから、連続アタック時のタイヤ消耗にやや不安を感じたため、うまくクーリングを入れながら使用することが求められそうです。
アタック数は少なかったですが、総合的に確実にタイムに直結するタイヤだと思いました。このタイヤが2014年の12月に発売されていたら(エイトリアン注:265/35R18のRE-71Rが発売されたのは2015年2月。アタックシーズン後半に入ったこともあり、来シーズンに購入を見送ったユーザも多いです)間違いなく購入していたと思います。メーカーとしてはオートサロンやJAF戦の開始時期に合わせて2月発売なのでしょうが、我々タイムアタッカーのシーズンは真冬なので、11〜12月にタイヤを新調することが通例です。ぜひこの時期も発売時期の候補としていただけるとありがたいです。

続いてエイトリアンの走行です。

エア圧は、れじ選手の走行後すぐのコースインであったため、190~200程度でスタートです。
コース状況は、雨が少しパラついているが、ややレコードラインに乾きが見えているか?という状況でした。最終コーナーでは入り口でブレーキを強く踏むと、キュッとタイヤが鳴る程度で、ウェット+一部ドライと言うのが良いでしょうか。
路面の見た目や想定よりもすごくグリップします。私自身は、既に2015年2月にRE-71Rを速攻で購入しており、圧倒的なドライグリップは体験済でした。しかし、ウェット路面は初体験のため、意図的に濡れている部分や、ウェットラインを通ったりしながらパフォーマンス確認です。
まず1コーナー。ラインはややドライ。ターンインでの縦グリップの強さはウェット路面でも同じであり、立ち上がりで多少ラフなアクセルワークをしたとしても、きちんとタイヤが路面を捉えてくれます。これがRE-71Rの速さの秘訣と思われます。では横Gを掛けるとダメなのか?というとそうでもなく、ウェット路面程度で掛けられるG程度であれば、普通にトラクションが抜けることもなくコーナーをクリアできていました。
続く1ヘアも1コーナー同様。
ダンロップ〜80Rの様な高速コーナーでは、さすがのウェット路面ではドライと同じようには走れず、勢い良くダンロップコーナーをクリアした立ち上がりで横滑り防止機能(DSC)が作動する状況でした。ただ、DSCの作動も大きな減速が継続せずコーナーはクリアできていました。
最終コーナーは前述のとおりほぼドライ。強い横Gを掛けながらでも全然問題なくクリアし、この日はアタックを3周実施し、ベストタイムは1分10秒554と、残念ながら9秒台に入れることはできませんでしたが、ウェット路面でも十分タイムを出せるタイヤであるとの確信を得ました。
なお、走行後のエア圧は2.3程度まで上昇していました。

次はkero選手の走行です。
kero選手走行時には、路面はほぼドライとなっており、この日のベストコンディションでした。
◆kero選手のレポートです
テスト当日はあいにくの天候でしたが、感じたことをレポートさせていただきます。
当日は、他社タイヤとの比較をより明確にするために、先にDL Z2スタースペック275/35R18で走行しています。ただ、Z2スタースペックでの走行時は路面がヘビーウェット〜セミウェットであり、RE-71R走行時はややドライと、路面状況が大幅に異なっていたため、正確な評価が出来なかったのは残念です。
自分は3番目の走行のため、すでに皮むきやある程度の熱入れは済んでおり、アウトラップ2周目からアタックを開始しました。レコードラインはそこそこ乾いているが、ライン外はうっすら濡れている状態であったため、横滑り防止装置(DSC)はONのまま走行しました。
アウトラップ1周目でタイヤを温め、すぐに10kpa程度上昇し、200kpa程度になったことから、タイヤの温まりの早さを感じました。アウトラップ2周目では、路面状況の確認とタイヤの感触を確かめるべく慎重に走行し、まずタイムは1分10秒790。この時点ですぐに、ブレーキング時の縦の強さを感じました。
アウトラップ3周目では強い横グリップも感じましたが、路面が完璧でないこともあり、DSCが働いてしまい、タイヤの限界までは試すことはしていません。しかしアウトラップ2周目よりも明らかにグリップしており、立ち上がりのトラクションも強く感じました。出したタイムは1分8秒560。
そしてアタック3周目(ラストアタックLAP)に入り、ここではブレーキング時にタイヤも鳴くようになりセミウェットながらしっかりタイヤが働いている事を感じました。1ヘア・80Rまだ濡れていたため、DSCが激しく介入するもその他の場所ではほぼDSCの介入はゼロ。タイムは1分8秒030。
自身がウェットやDSCがONでの走行に不慣れな中、この1分8秒030というタイムには驚きました。真冬のドライでのアタックでは、間違いなく自己ベストである1分5秒台の更新が出来るタイヤだと確信できました。

4番目はいなとみ選手の走行です。
いなとみ選手はかなり濃いレポートを記載していただきましたので、ほぼそのまま紹介します
■現在使用しているタイヤについて
メーカー:グッドイヤー
銘柄:イーグル RS−Sports
サイズ:265/35R18
使用期間:2013年10月から
■当日のタイム
・POTENZA RE−71R
4月5日 E2枠 10:20から
天候 小雨ときどき曇り
路面 レコードラインのみややウェット
ベストタイム 1’07.075 (アタック3周中3周目[DSC ON])
・EAGLE RS−Sports
4月5日 E3枠 13:00から
天候 小雨ときどき曇り
路面 全面ややウェット
ベストタイム 1’09.039 (アタック4周中4周目[DSC ON])
※現在までのベストタイム 1’06.056 (EAGLE RS-Sports 265/35R18[DSC OFF])
■ロガーデータからの所感
当日は小雨が降ったり止んだりの不安定な天候でしたが、POTENZA RE-71R(以下RE-71R)の実力の片鱗は十分に感じられるものでした。
まず、一番に感じられるのは、ブレーキングの安定性です。ややウェットの難しい路面コンディションでRS-Sports(以下RS-S)の場合、制動初期からABSが介入し、思うように制動距離を縮められないのに対し、RE-71Rは非常に安定したグリップでブレーキングを終わらせることが可能でした。これはロガーのデータからも見て取れます。

※赤ライン=RE-71R 青ライン=RS-S 以下同
グラフは距離/速度を表しています。
RE-71Rの赤ラインに対し、青ラインのRS-SはABSが介入する分、踏み直してABSを解除させたり、制動が緩慢となっています。各コーナーのボトムスピードを比較してもRE-71Rがほぼ上回ってます。顕著なのは制動開始をしているポイントで、特に最終コーナーでは10数メートルの違いがあります。そのお陰で最高速も伸びており、RS-Sの165.9km/hに対し、RE-71Rでは168.5km/hと筑波サーキットの短い直線でこの差は大きいと感じました。併せて縦Gのグラフと比較してみます。

グラフは時間/縦Gを表しています。
ブレーキングが安定しているので、短時間で終わっていることが判ります。路面が完全でない中で−1.2Gに到達する減速力も素晴らしいと思います。また立ち上がりの加速もスムーズなグラフが描かれているように、グリップの抜けなどは感じられませんでした。

グラフは距離/横Gを表してます。
横Gのピークが全体としてRE-71Rが上回っており、その位置もコーナーの奥になっています。ブレーキの安定感と相まって高いGを維持しながらターンインが出来ていると見て取れます。
■その他の所感
6名で試乗のうち4番目でタイヤば十分に熱が入っている状態でしたが、自分が使用している間に、熱ダレなどは感じることは出来ませんでした。路面が濡れているので、正確なものではありませんが、今後、夏場など暑い時期での使用で判断できればと思います。また、タイヤ自体は比較的柔らかい印象を受けました。剛性感が無いというものではなくよく動いているといった感覚です。自分としてはもう少し空気圧を上げ、張りのある感じが好みなので、データと相談しながら決めたいと思いました。
■まとめ
総じて全ての点で性能が向上したタイヤであると感じました。あらゆる面で懐が深く、インフォメーションも分かり易い安全に速く走ることが出来るタイヤだと思います。私自身も使いたいと思うタイヤですが、むしろ初心者の方が使った時にスポーツ走行を安全に楽しく走れるのではないかと感じます。

5番めはヨシフミ選手。
路面は残念ながらまた雨が降りウェット状態になってしまいました。
◆ヨシフミ選手のレポートです
テスト車両:RX-8 タイプS
チューニング内容:エンジンサイドポートチューン、エアグルーブ(ラムエア
チューン)、車高調F14kg,R10kg、
GTウィング装着
自己ベストタイム:1分6秒020(DL Z2スタースペック 265/35R18)
走行結果
E1:8時25分 DL Z2スタースペック 265/35R18で13周走行。
路面:ウェット
ベストタイム:1分15秒300
Y3:12時30分 RE-71R 265/35R18で4周走行。
路面:ウェット
ベストタイム:1分11秒200
E1では、昨年12月から使用している、Z2☆を使用しました。
小雨が降る中での走行、最終コーナーのライン上は乾いてきているが、それ以外のコーナーでは、少し無理をするとABS、DSCの介入が入るというコンディションです。
2ヘア立ち上がりも少し早く踏み始めると空転、DSC介入⇒失速という状況でした。
Y3ではいよいよRE-71Rでの自身初走行です。
路面は30分ほど前まで路面が乾き始めていましたが、走行直前より雨足が強くなり、路面の色が変わり始め、ほぼウェットという状況になっていました。
タイヤのコンディションは、前走者から1時間ほどのインターバルがあったため、表面温度は下がり、内圧は1.75程度からスタートしました。
アウトラップ2周目からアタックを開始します。1コーナーでのブレーキングでは、前の走行の時よりも路面も少し乾いているせいもあり、しっかりとフルブレーキをかけてもABSの介入はほぼありませんでした。コーナーリングで横Gが最もかかる部分では、E1枠+Z2☆の時にはリアがスライドし始めてDSCが介入する速度であっても、RE-71Rの場合、何事もなく曲がれます。
1ヘアの飛び込みから脱出にかけても全く危なげなく頼もしいグリップが感じられます。タイヤがよれる感じもなく、しっかり感もあります。ダンロップから80R、最終コーナーの中高速コーナーにかけてはZ2☆の時とは違い、オーバーステアなども発生せず通過できました。
走行結果としてのタイムについてですが、E1枠より4秒程度更新したにも関わらず、まだかなり余力がありました。(タイム:1分11秒200)
以上、残念ながらウェット路面での比較になりましたが、Z2☆より明らかにタイムもよく、フィーリングとしてもタイヤのしっかり感があり、温まりも早いことから、我々のようなタイムアタッカーならば、もうこれを使うしかないだろうというのが正直な感想です。RE-71Rをドライで試したかったところですが、次のアタックシーズンには、新品のRE-71Rでアタックするのが今から楽しみです♪

最後の枠の走行は、R大佐選手です。
路面はヨシフミさんと変わりなく、ほぼウェットと言える状況です。
◆R大佐選手レポート
比較対象の現在の使用タイヤ:GY RS-Sports(以下RS-S)
RS-Sのタイヤサイズ:265/35R18
RS-S使用期間:2014年12月〜使用で普段使い無し、サーキットのみ
当日の71Rのタイム 1分8秒640 (ハーフウエット、一部ドライ)
DSC OFF
コース2000の自己ベスト 1分5秒745 DSC OFF
私の走行枠は6台目で、5台目のテスト走行車から時間がさほど経過していなかったこともあり、少しタイヤに熱がある状態からスタートしました。なお、他のテスターとは異なり、自分は同枠でRE-71R⇒RS-Sの2種類のタイヤを、ほぼ同一のコンディションでテストしています。
RE-71Rへ履き換えて感じたのは、どこでもなく、最初のピットロードからです。ピットロードを低速で走った時に、路面をしっかり捉えていることを感じました。これには正直驚きを隠せませんでした。
そしてコース上でのタイヤ感触ですが、まず印象強かったのはブレーキングでの違いです。RS-Sは踏み始めからリリース寸前までABSが若干作動したのに対し、RE-71Rはほぼ同じ速度・同じ操作をしてもABSが作動せず制動力を発揮してくれました。また、同じ踏力でのフィーリングはRS-Sと比較するとRE-71Rの方が安定感がありました。
コーナーのブレーキングが終わりターンインに移行する場面では、これまでRS-Sではアンダーステアが出始める舵角ポイントがあったのですが、RE-71Rだと同じ舵角でもアンダーステアが発生する事無く旋回ができ、データロガーを見ても最大横G(RS-Sが1.711 71Rが1.799)でRE-71Rの方が高く表示されてました。これはバンクがついていない1コーナーで特に感じられ、タイヤの素のグリップ力の高さが伺えます。
また 80Rの旋回加速中では、RS-Sは路面の多少の凹凸で車体が上下し、リアタイヤの接地面変化が起きてトラクション性に不安があった一方、RE-71Rはタイヤが路面をいなすような感覚に陥りました。もしかしたら完全なドライ路面場面では体感出来なかったと思われます。
ロガーデータを精査したところ、面白い結果が出ています。ロガー上の最高速度では、今年1月に自己ベストタイムを出した時は 165.26Km/h(ブレーキ直前)でしたが、今回のRE-71Rのテストでは162.72Km/hと、約3Km/hとは言え、上回っていたのです。1月との気温差、路面コンディションなどに加え、最終コーナーへの減速ポイントがウェット路面なら早めになるということから、このデータに驚愕しています。ブレーキ、旋回、加速のすべてがRS-Sより上回っている事からであろうと推測しています。
RE-71Rは、特別に運転の仕方を変える必要がなく、様々な場面において楽しいと思わされたタイヤです。RS-Sでも扱いやすく、タイムも出せて非常に満足していた私にはショッキングなタイヤの存在の登場と言えます。
今回のアタック3LAPだけのテストで、ここまで体感できるとは正直思ってもいませんでした。
レポートは以上となります
以上、参加者全員のレポートとなります。

恒例のタイヤチェック。

左前。FLタイヤ。あたり前ですがまだまだキレイキレイです。

左後ろ。RLタイヤ。

右前。FRタイヤ。

右後ろ。RRタイヤ。
以上でレポートは終了です。
なかなか同日に複数ドライバーのテストやレポートというのはないと思いますが、今回は非常に有意義でかつ楽しい一日でした。
結論としては、RE-71Rは現在最強のタイヤであるということを確信できた、というところでしょうか。耐摩耗性についても現在私自身がテストをしていますが、こちらもネガティブな部分はほぼ見当たらず、何よりもアタッカーにオススメできるタイヤであると言えます。
正直、タイヤの世代が2世代くらい変わってしまった、そのくらいの状態です。
他社の追従がどうなるか、今後の動向が非常に楽しみです。